9年前、初めて新潟の酒造会社に行ったんです。
で、新潟まで来たのなら、日本一美味い米の産地「魚沼地区」を見に行かなかったら米屋じゃない!と思い、右も左もわからない魚沼へ突撃しました。
でもこの魚沼の中でも本当に美味しい地区は限られてるハズ!でも、農家さんに聞いたら自分の水田が一番美味しいって断言するに決まってるから、僕は米屋さんに「魚沼のどこのお米が美味しいの?」って聞くことにしました。
今ならどうかは分かりませんが、当時は震災直後で「神戸から来た」って言うだけで、極秘的な情報も教えてくれました。それは・・・
「一般に出回る魚沼は北魚沼、で、本当に美味しいのは南魚沼の六日町、十日町、塩沢町。そして、その中でも幻なのが十日町の川西地区と塩沢町の大沢地区、でもね、このお米は地元の私でも年間に30kgしか手に入らないのよ」と。
僕は「2合だけでも売ってください」と懇願したんですが「売り先が決まってるから本当に無理なのよ、ごめんね」と。売ってくれないなら自分で農家さんに交渉すべし!
大至急、大沢地区へ車を向かわせました。途中、その話の裏をとるために、別の米屋さんでも同じ質問をしました「魚沼の中でも特に美味しいのはどこの地区?」「川西と大沢だよ」答えは全く同じでした。
大沢に到着すると、お爺さんが農作業をしていました「ここって大沢ですよね、お米って余ってます?」「大沢ですよ、うちにはもうお米は無いね、でも、この上の黒田さんって頑固男ならまだ稲刈りしてないかもよ」黒田、黒田、黒田、探すこと約10分、今度はお婆さんが農作業をしていました。
「すいません、黒田さんですか?」「あぁそだ」黒田家発見!でもお婆ちゃん子の僕は、お米の交渉をすっかり忘れてお婆ちゃんとの話に夢中になっちゃって(笑)そしたらお婆ちゃんが、いっぱい果物をくれたんです、しかも「田んぼにいるワシのせがれにお前さんを紹介したい」と。これは想定外の展開!
水田に行くと頑固そうな米職人が綺麗に揃った稲穂を眺めていました。そして、ここまでに至った経緯とお米に対する僕の情熱を話すと米職人は「よし!ワシの息子(米)を君に託そう!」
交渉成立!やったぁぁ!!
初年度は本当に少ない量でしたが、あれから9年、じっくりと信頼を得て、地元の米屋さんでも30kgしか手に入らない幻のお米が、僕の店には3600kgも託してもらってます。
本当に美味しいお米は、味はもちろん、口の中に入れたときのモチモチ感、ツルツル感、香り、冷めた時の甘さ、食感、そして、のどごし。すべてのバランスが絶妙にからみあって、僕の身体を骨抜きにするんですよねぇ。
今年もまたこのお米を精米すると、工場中にひろがった甘い香りが、僕の身体を包んでくれます。
魚沼最高!大沢最高!
でも、めちゃくちゃ高いよw